放送事業でのクラウド利用を考えてみる ~ 第一回 「必要性」
今年2014年のNABでは、4K、Video over IPに続いて、クラウド利用のプレゼンテーションが目立ちました。
クラウドは、番組制作でのファイル共有や素材転送などに利用することではイメージ付きやすく、既に利用されている方も多いと思います。
ただ、放送オペレーション(営放システムオペレーション)、
- 素材登録
- 編成
- CM貼り付け
- 番組送出
- アーカイブ
などなどをクラウド上で出来るか?というと、まだイメージがピンときません。
というのもテープで放送オペレーションをしていたわけですから、人を介して物理的に作業を行うことが感覚的に染みついてしまっているからだと思います。
筆者もそんな一人だと思っています。だからこそ、今、真摯に考えてみたいと思います。
回数未定ですが、今回は第一回として、そもそもクラウドにする必要があるのか?といった疑問から始めたいと思います。
ちょっとキッカケになった記事を紹介します。
ローソンや日通がAWSへ全面移行、AWS Summitで明らかに
AWSといえばAmazonのクラウドサービスの総称です。Amazon Web Service。
ローソンの専務さんが語った、「ベンダーやハードウエアのロックインを避けるためにAWSへ全面移行する」というのに引っかかりました。
なるほど、そういう視点もあるか・・もちろん、AWSにロックイン!、って揚げ足を取りたくなりますけど。
… 戻って、一般的なクラウドの必要性を考えてみました。
- コスト削減
- BCP(事業継続計画)対策
- 拡張性が高い
- 柔軟性が高い
- スペース効率
- システム管理負担の軽減
まずコスト削減に関しては、他の導入理由を明確にしたうえで中長期的な予算プランを書くしかないので、まずは重要としません。もちろん最終的にコスト増になったら経営者はウンと言わないでしょうけど。
その経営者に対しても一番説得力がありそうな理由として、BCP対策があります。
震災といった広域的な災害時対策に目が行きますが、地域停電や回線断などの部分的な障害に対応するバックアップ対策としての方が現実的です。
以前BCP対策を社内検討する立場に居たときに、“オフィスが火事”という想定対策が、実は一番苦労したという経験があります。
オフィスが火事、ということはパソコンが全部使えません、ってことになります。対策として“サテライトオフィスの設置”なんてことが考えられ、営放サーバーにリモートアクセスすることくらいまでは思いつきます。
ただ、“サーバールームが火事”になったら?と問われるともう袋小路になってしまいました。。。
ここで注目すべきは、リモートでサーバーにアクセスする、ということです。まずシステムにリモートアクセスする行為は、事業問わず、システム管理者だけの特権行為です。
FTPサーバーを設置して、ユーザーにもある程度自由に使用できる環境を与える場合もありますが、営放システムのような基幹システムをインターネットを介してユーザーが操作することは今までの常識では考えられません。
そもそも営放システムは独自のソフトウェアからDBにアクセスするように作られていて、ユーザーが使用する端末はガチガチにカスタマイズされていることが多いのです。
メーカーからは“営放端末はインターネットに接続してはいけません”と念を押され、クローズしたネットワークに閉じ込められ、放送準備スタッフの上には社内パソコン、営放端末、EPG端末、といった複数のPCをモニタ切替機を使って操作する画が想像できます。
複数のネットワーク、複数のサーバー、複数の端末、これを一気にユーザーにリモートアクセスをさせるのは至難の技、、というか不可能に近いです。
セキュリティのことは横に置いといたとしても、現実の放送運用システムというのは“ロックイン”されてることが多いので。
何れにしても、サーバールームが火事になったらお手上げです。火事にならないように祈るか、別の場所にサーバールームとサテライトオフィスを一緒に丸ごとコピーするか。
一つの答えとして、営放システムメーカーのプラットイーズが、“Ploud”ソリューションを提案しています。
ブロック概念図で紹介されており、“ダッシュボード”の中にコンテンツを中心に管理できる機能を盛り込んでいます。おそらくCMSといった感覚のものだと思います。
またバックアップセンターの設置によりBCP対策としてのソリューションが考えられており、どこからでもアクセスが可能で、交通手段がない場合でも自宅で作業可能と想定しています。
本社には現用の営放サーバーを置いて、クラウド上にバックアップサーバーを設置する。ユーザーはどこからでも、どちらにもアクセス可能。
こんなイメージでクラウド利用を考え始めると、しっくりくるのではないでしょうか。
今回はとりあえず入口のイメージだけにしておいて、次回は、Amazon AWSを例にとってクラウドサービスで何ができるかをじっくり考えたいと思います。