放送事業でのクラウド利用を考えてみる ~ 第三回 「クラウドストレージ」

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“放送事業でのクラウド利用を考えてみる” 第三回です。

二回目で、クラウド用語を整理することができ、少しずつですがクラウドが身近に感じられてきました。

そこで三回目からはより具体的にクラウド利用について考えていこうと思います。今回は「クラウドストレージ」についてです。

 

番組制作においてテープレスが当たり前になり、ビデオファイルを共有することに違和感がなくなっている現在では、「クラウドストレージ」は十分考えられます。

現在で、一般的且つメジャーどころのサービスを挙げると、

  • Google Drive
  • Microsoft OneDrive
  • Adobe Creative Cloud

あたりが思いつきます。筆者も何気に三つとも使ってますし、無料の範囲があるので、利用されることが多いです。

このあたりのサービスを番組制作などで利用することを考える場合、機能や容量、スピードの差があるにせよ、他者(共同制作者やクライアント)とのファイル共有には使用できそうです。

例えば、クライアントチェックのプレビュー用低解像度ビデオファイルや、編集素材として使用する写真やCGなどのファイルをアップして共有する、などが考えられます。

ではバックアップストレージという考え方はどうでしょう。その場合、ポイントになる機能とがあります。それは、パソコンのローカルフォルダーとクラウド上のフォルダーが同期する、ということです。

こんな感じ。。

cloud

クラウド上のファイルを直接編集するのはインターネット帯域を考えると現実的ではありませんが、ファイル共有やバックアップとして活用することは容易に考えられます。

 

と、、、ここまではありきたりな話ですので、もう少し深く見ていきます。。

Google Drive、OneDrive、Creative Cloudなどは、前回紹介したクラウドサービスの種類でいうとSaaSとなり、ローカルフォルダとクラウドストレージの自動同期機能があるにせよ、ブラウザインターフェース越しでしか操作することができません。

例えば独自のデータベースとの接続してメタデータを管理したり、ファイルの移動をするといった、営放システムとの連携などはちょっと難しいです。(※APIなどが公開されている部分もあり、不可能とは言いがたい。)

クラウドストレージをもっと意のままに操りたい、そう考える場合には、PaaSを選択することになります。

GoogleやMicrosoftでもPaaSはありますが、ここではストレージに特化されたPaaSであるAmazon S3を紹介したいと思います。

 

Google Drive と Amazon S3の比較

わかりやすいように、SaaSのGoogle Driveと、PaaSのAmazon S3を比較しながら見ていきます。

今回用意した素材は以下の通り。

  • ファイル名:storage_test.mp4
  • ファイルの大きさ:約1GB
  • ファイルフォーマット:H.264/MP4
  • 解像度:1080p
  • ビットレート:約30Mbps
  • 内容:年初のお参りとネコ

こちらをまず、Google Driveにアップして一般公開共有しました。

https://drive.google.com/file/d/0B4JdPQnOnOZtRzFjV0Ntc2xaeVU/edit?usp=sharing

どうでしょう。Google Driveのブラウザインターフェース上でプレビューできたかと思います。

サイトへの埋め込みもできるので一応やっておきます。

面白いのが、プレーヤーインターフェースがYoutubeとほぼ同じです。しかも、プレビュー用に各解像度(1080p/720p/480p/360p)に変更できます。

どうやらYoutubeと同様、1つのアップロードファイルからプレビュー用低解像度ファイルを自動生成してくれるようです。

30Mbps/MP4ファイルをネット越しに再生するのは帯域が揃ってないと難しいので、これは嬉しい機能ですね。

使用感で言うならば、Google DriveはプライベートYoutubeみたいなものです。

 

次にAmazon S3にうつります。

まずAmazon S3を利用するにはAmazon AWSのアカウントを取る必要があります。現在12か月の無料試用期間があるので、そちらを利用します。

AWSのブラウザインターフェースでログインし、コンソールに入ります。

aws

たくさんサービスがあります、、すべてを知ろうとすると時間がいくらあっても足りないですが、この中のS3を選択します。

 

s3

Bucketというフォルダーらしきものを作り、その中にファイルをアップロードをしていくことになります。

この辺りの操作感は、Google Driveとさほど変わりません。どちらかというとS3のほうがシンプルでわかりやすいかもしれません。

ただしS3はブラウザ上でプレビューするインターフェースを持っていません。単なるストレージを提供しているに過ぎません。

なのですが、それが最大の魅力です。要はあとはお好きにどうぞという考え方です。

まずアップロードしたファイルを右クリックし、‟Make Public”します。公開するといったことですね。

makepublic

そのあと、‟Properties”を開くと、URLが表示されます。

単純にそのURLをブラウザで表示するとダウンロードが始まってしまいます。なので、まずこの記事に埋め込んでみます。

【S3上のビデオファイルをHTML5ビデオプレーヤーで再生】

この放送機器.comはWordpressで作られていますので、HTML5ビデオプレーヤーのプラグインを使用し、先ほどのURLを指定すると上記のように再生することが可能です。

30Mbpsの素材なので、再生がカクつくかもしれません。なので、2Mbpsまで落とした素材もアップしてみます。

 

【S3上のビデオファイルをHTML5ビデオプレーヤーで再生】※ビデオファイルは2Mbps

どうでしょうか。うまく再生してますでしょうか..?

さらに、もっと身近なアプリで再生することもできます。もしVLCプレーヤーをお持ちでしたらメニューの”メディア”から”ネットワークストリームを開く”に下記URLを入れて再生してみてください。

  • 30MbpsファイルURL:  https://s3-us-west-2.amazonaws.com/housoukiki/storage_test.mp4
  • 2MbpsファイルURL:  https://s3-us-west-2.amazonaws.com/housoukiki/storage_test_2M.mp4

※注意!上記URLをそのままブラウザで表示するとダウンロードが始まってしまいます。

 

VLCプレーヤーで再生できることで、SaaSとPaaSの違いを見いだせることになる思います。

ただYoutubeも上記と同様な方法でVLCプレーヤーで再生することができるので、PaaSだからVLCプレーヤーで再生できるということではありませんが、重要なのは、PaaSは他アプリケーションからのアクセスが可能である、ということです。

それは、特定のブラウザインターフェースではなく、自前で用意したプレイヤーまたはデータベースとの連動が可能になる、と言い換えることができます。

AWSに限ったことではないですが、PaaS製品はAPI/SDKが用意されているので、既にNASなどのネットワークストレージやMAMを導入していても、クラウドストレージとの連結は可能です。

 

比較結果

おさらいとして、Google DriveとAmazon S3の違いをまとめてみます。※ここでいうGoogle DriveはAPIやSDKを使用しない前提です。

Google Drive Amazon S3
参考アップロード時間(1GBファイル) 約25分 約1時間
フォルダー同期 あり なし
低解像度ファイル生成 あり なし
ブラウザプレビュー あり なし
他アプリケーションからのアクセス なし あり

アップロード時間に関してはユーザー環境、ネット環境、サービスレベルの違いなどがあるので、あまり意味をなさないかもしれませんが、他比較項目はSaaSストレージとPaaSストレージを比べるには適していと思います。

先述した通り、クラウドサービスは APIやSDKといったカスタマイズを可能にするものが用意されているので、実際サービス選択する際にはじっくり検討する必要があります。

 

課題

さて、、なんとなくですがクラウドをストレージとして利用するイメージがわいてきました。

直接編集するオンラインストレージとしては難しいにしても、バックアップまたはアーカイブとしては使えそう、、とは感じられるかもしれません。

ただ今回のテーマである、‟放送事業でのクラウド利用を考えてみる”はあくまでも、完パケ後の、実際の放送送出オペレーションにクラウドを利用することなので、その目線からすると大きな課題があります。

それはアップロード(転送)時間です。日々の放送送出オペレーションでは、1分1秒を争うことが起きます。

完パケを手にしたら、すぐに考査プレビューをし、問題がないか確認したくなります。

またOA当日搬入なんてことも多いので、すぐに営放システムに登録して、放送用ビデオサーバーへの転送などが出来ないと、運用自体が成り立たなくなります。

オペレーションに効率性と安全性を持たせるためには、やはり転送速度が一番の課題です。

今回の検証に使用したファイルは1GBで、もしDVCPRO HD 100Mbpsで考えたら、1分ちょいの素材になります。1分の素材を1時間かけて転送なんてことは、現実的ではありません。

やはりファイル転送速度を上げるためのソリューションが必要になります。

 

‟高速ファイル転送” と言って思い浮かべるのは、AsperaかSigniantでしょうか。この放送機器.comでもSigniant のMedia Shuttleを記事として紹介しました。

Media Shuttleはどちらかというと‟高速ファイル便”といった感じのものでしたので、課題である‟クラウドストレージへのファイル転送速度向上”には適していません。

Aspera、SigniantともにAWSへのファイル転送速度を上げるソリューションを用意してます。

SkyDropは7日間のお試しができるので、今回早速試してみました。

どういうソリューションかというと、SkyDropアプリケーションがローカルのフォルダーをWatchし、自動でAWS S3の指定フォルダーにアップロード(同期)してくれるというものです。

同期フォルダーを選択します。

SD1

 

AWS S3のアクセスキーやBucketの名前などの情報を入れます。

SD2

 

同期フォルダーをWatchし、同期フォルダーにファイルが入るとS3へのアップロードが開始されます。

 

SD3

 

現在ローカル側のクライアントにインストールするアプリケーションはMacのみになりますが、今後Windowsにも対応する予定のようです。

で、実際やってみた結果、1GBのファイルが約3分ほどでAWS S3に転送できました。この時間も環境次第なので参考までですが、筆者環境で1時間かかっていたものが3分に短縮できたことは事実です。

1GBを1分の素材と見たときには1分が3分かかってしまうので手放しで喜べませんが、圧縮率の高いコーデックを選択すれば十分早いと感じることもできます。

 

まとめ

クラウドストレージに自由にアクセスできることは確認できました。

また転送速度という課題もあるにはありますが、SonyのXAVCやHEVCの普及が進めば、4K時代になったとして圧縮率の向上を見込むことが出来ます。

徐々にですが、‟放送事業のクラウド利用”を現実的に考えても良いと、感じてきました。

そして今回、ビデオファイルを雲の中に入れたので、次回はシステムを雲の中に入れてみたいと思います!

 

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