放送事業でのクラウド利用を考えてみる ~ 第二回 「クラウドコンピューティング」
“放送事業でのクラウド利用を考えてみる” 第二回です。
第一回の後、クラウド、クラウドって言うけど、筆者自身どこまで理解できてるのかものすごく不安になり、改めて整理しなおそう。。となりました。
というのも、代表格のAmazon AWSを試してみたものの、用語がピンと来ないので、これから回を重ねていくのに不都合が起きると思いまして。
なので、2回目にして基本をおさらいしたいと思います。
クラウドコンピューティング
この呼ばれ方は、クラウドの総称のようなものです。基本概念みたいなものですね。
本当でしたらクラウド技術という(システム内リソースの共有だったり仮想化だったり)技術的な解釈が先のような気がしますが、一般的なイメージは主にインターネットを利用したサービスとされ、“クラウド上に”と“インターネット上に”が同義語のように使われがちです。
ただそのイメージだと、放送事業、というか放送システムでいうとタブーな考え方だったりします。放送システムネットワークにインターネット接続なんてありえない!ってな感じに。
ではちょっと視点を変え、クラウドの反対語ってのも存在します。雲だから土?、とか海?ではありません・・
クラウドの逆の意味として、オンプレミス(on premises)という言葉があります。こちらの意味は、“自社で用意した設備で自社運用する”ことです。
ん?自前でやることがクラウドの逆の意味ですか。。だとするとクラウドは“アウトソース(外部委託)する”ことってなります。
放送事業でアウトソースというと人材のイメージが強い気がしますが、ここで言うならば“システムのアウトソース化がクラウド”のほうがしっくりきます。
であれば、放送事業のクラウド利用は、放送システムのアウトソース化は可能か?という議論となるのではないかと感じてきました。
クラウドサービス形態
クラウドって何?のありきたりの答えとして、“サービスです”という答えもアリだと思います。クラウドサービスを商品として事業を展開するサービス企業があってのものだからです。
- Amazon
- Microsoft
他にもCiscoやVMwareなど挙げたらキリがないですし、Ustreamやニコ動、はたまたDropBoxやギガファイル便だってクラウド事業者といえるかもしれません。
結果、分類することが余儀なくされるのですが、大きなくくりとして3つに分けて考えることが多いようです。
<パブリッククラウド>
…インターネット利用の一般向けサービス
<プライベートクラウド>
…業界内・企業内(ファイヤーウォール内)などのサービス
<ハイブリッドクラウド>
…上記の両者を組み合わせたサービス
ふむふむ。
Google Driveや、MicrosoftのOneDriveなどはパブリッククラウドと呼べそうですね。
プライベートクラウドは社内もしくはデータセンター内にクラウドサービスを設置して、専用線などを用いてクローズなネットワーク構成で運用します。
ハイブリッドクラウドはWANとLANを行き来するイメージです。
もう一つ、マルチクラウドという言葉もあるようで、例えばAmazonとMicrosoftのクラウドサービスを両方利用するなんて時にそう呼びます。
ここで理解すべきは、クラウドはインターネット上に配置しなくても良いという考え方です。
データセンターにラック1本でも借りて、とりあえず仮想化可能なブレードサーバーひとまず置き、専用線で社内ネットワークと繋いだシステムも、クラウドと呼ぶことができます。
そう考えると、それなら出来そうと思えてきませんか?
ただ、出来そうですけど、クラウドっぽくないので、ある意味面白くはないです。。クラウドはどこにあるかわからない、、雲の中にあって欲しい。とも思います。
クラウドの種類
サービス形態を踏まえたうえで、クラウドでいったい何がしたいのか?です。もちろん様々なことができます。ここでは3つの種類に分類します。
SaaS (サース、Software as a Service)
パブリッククラウドでの利用がほとんどだと思います。例を挙げたほうが解りやすいですね。
- Microsoft Office 365
- Google Apps
などがそうで、メールやスケジュール管理、また文書作成・表計算や会計ソフトなどなど、パッケージで提供されるもので、その多くはブラウザで操作可能です。
Gmailのアカウントを持つと、あれもこれもできるようになりますが、それがSaaSだったりします。みなさん既に使ってますよね。
PaaS (パースまたはパーズ、Platform as a Service)
こちらもパブリッククラウドで提供されます。インターネット経由でユーザーが持つアプリケーションから実行するためのデータベースやコンテンツを格納するためのプラットフォームを提供するものです。
- Microsoft Azure
- Amazon S3 (Amazon Simple Storage Service)
- Google App Engine
などがそうです。SaaSとの区別が付きにくいかもしれませんので、例を挙げます。
“Google DriveはSaaS、 Amazon S3はPaaS”
Google DriveとAmazon S3、ともにクラウドストレージサービスです。ファイルをクラウド上にアップロードし、共有・ダウンロードができます。
違いは、アップロードしたファイルをユーザー側のアプリケーションで使用できるかどうかです。
例えば、Google Driveに動画をアップロードしたとします。その動画はGoogle DriveのブラウザのWEBアプリでしか再生することができませんが、Amazon S3にアップロードした動画は、VLCプレーヤーなどで再生できます。
※この辺りを次回第三回に詳しく紹介します。
IaaS (Infrastructure as a Service)
IaaSは、仮想化されたプラットフォーム(インフラ)を、サービスとして提供するもので、ほぼパブリッククラウドでの利用になります。
代表とされるのはAmazon EC2です。今回初めてAmazon AWSのアカウント作り、Windows Server 2012R2をクラウド上に持ってみました。ものの10分15分で。
イメージにはありましたが、実際にやってみるとピンときます。
インスタンスと呼ばれるものを作り、OSを指定します。そのインスタンスにリモートアクセスすることが可能になり、普通のサーバーの遠隔操作と同様に扱うことができます。
※この辺りは第四回に詳しく紹介します。
まとめ
クラウドと呼ばれだしたのは2007年頃からですが、その技術は1980年代から始まるネットワークやインターネットの根本的な考え方に沿うもので、脈々と培われてきたものです。
Amazon AWSは2002年から開始されていたとは、今回初めて知りました。
放送システムも確かにパソコン・サーバーだらけですが、“放送技術のIT化”なんてことは、今まさに始まったばかりという気がしています。
次回からは徐々に具体的な話にしていこうと思っています!